医療安全について

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医療安全についてMedical Safety

医療安全を考える

理事長 角南 義文

理事長 角南 義文

ギリシヤの医神といわれるヒポクラテス(前460年頃~前375年頃)には「ヒポクラテスの誓い」というものがあり、『医術は患者の福祉のためにするのであり、加害と不正のためにはしないように慎みます。』という一項があります。この原則は、2000年後の現在も不変です。

平成11年1月11日の横浜市立大学附属病院の起こってはならない手術患者取り違え事故以来、国民の医療の安全性を見る目は一変しました。

「赤ひげ」(山本周五郎著)の時代には、薬はわずかな薬草であり、医師がすべての医行為を行なっていました。当然、医療機器もありません。そこには誤投薬とか人工呼吸器を外しっ放しにしたとか、連絡ミスによる医療ミスということは起こりませんでした。

少々の程度の差はあるが、一人の人間のできる仕事量には、限界があります。医療ミスの報道される現場は、多くは大病院です。報道されているような医療ミスは、多くは人災といってもよいでしょう。それを防ぐには何といっても人材が必要です。しかるに、医療ミスが報告されているところの多くは、医行為の質は高度で医療の量も多いと思われます。

現在の診療報酬上の医療費では、より多くの人材を集めての仕事の分散はまず不可能です。医療費が世界一といってもよいほど安い日本の病院の職員数は米国の1/5にしかすぎません。それ以上は雇えないのです。そのことは、日本では1人が5人分働いているといってもよいのです。こういうところに、現在報道されている医療ミスというものの要因の一つはあると私は思っています。といっても人員の少ないことが、医療ミスの免罪符になるわけではありません。

「赤ひげ」と同じように、自分でやる医行為では必ず責任をもって、この患者に何が必要かをいつも考えておかねばいけません。人間というものを前にして「ヒヤリ」「ハット」とは何事か!!というお叱りの声が聞こえてきます。我々は医行為の原点に返って、医療人として何をしなければならないかをいつも考えて医療にあたらねばなりません。

当院の医療安全管理体制について

当院では平成11年1月の横浜市立大学病院患者取り違え事故が起こった直後の4月より、院内に医療安全管理委員会を設置し、院内で行なわれる全ての医療行為に対してミスや事故のないように、またより安全性の高い医療行為が行なえるように努力してまいりました。

現在の医療では、インシデントやアクシデントを完全に防ぐことには限界があり、いかにそのような機会を少なくすることができるか、または患者さんへの影響が出る前に気づく体制が確立できるか、また、もし予期せぬ事態が発生したとしても最小限の影響で抑えることができるか、ということが大切と考えられています。 そこで、私たち竜操整形としては、外部講師などを招聘して日々研修を重ね、自分たちの多職種でグループワーク(GW)を行い、起こりうる事象についての根本原因を分析し、可能な範囲での対策を考え実施する。
また、平素から業務の基準や不具合への対応方法を認識するため、重要な作業に対して業務フローを作成し、可視化することで多職種で共通認識を持ち協働できるよう努めています。

当院に来院される患者さんが、安全に安心して診療や手術などが受けられるよう、我々医療人として最大限可能なことを実践していく覚悟です。

医療安全管理者

現在、院内で行なっている医療安全にかかわる業務は以下に示すとおりです。
医療安全管理体制 内容
1. 医療安全管理委員会
  • ・小委員会からの状況報告の合意と実施命令
  • ・インシデント事例分析と対策案の承認
  • ・他施設での事例検討
2. 医療安全小委員会
  • ・インシデント・アクシデントレポート検討
  • ・報告書に基づく実地検証や改善策の評価
  • ・院内巡視(安全ラウンド)による内部監査
3. インシデント・アクシデント
報告システム
  • ・原則的に院内の全ての事例を各部門で収集・検討
  • ・特定の事案に関する事例取集(オカレントレビュー)
4. 院内医療安全管理研修会
  • ・外部講師による教育研修(写真1)
  • ・根本原因分析などのGW研修(写真2)
  • ・緊急時の救命処置研修(写真3)
  • ・医療機器・医薬品安全研修
5. 医療安全ガイドラインの策定・改定等
  • ・医療安全管理マニュアルの改訂
  • ・医療安全管理指針の年度改定等
6.院内安全対策の検討と実施
  • ・院内業務フローの充実と改善
  • ・手術や周術期(患者受け渡し、マーキング、タイムアウト、ガーゼカウント等)の安全対策
  • ・患者・部位確認、輸血実施、注射点滴3点認証、転倒転落防止策(A~I)
  • ・院内事故調査緊急対策会議(委員会)等
① 研修風景
外部講師による安全管理研修

▲外部講師による安全管理研修

GWによる根本原因分析研修

▲GWによる根本原因分析研修

患者急変時対応(BLS,ACLS)訓練

▲患者急変時対応(BLS,ACLS)訓練

② 医療安全ラウンド

医療安全に関しては、対策を講じて実施するだけでは院内での事故は防げません。
検討された防止策が現場でどのように実施されているか、患者さんの療養環境に危険はないか、また、業務の流れが確実に守られているかなど、安全管理者による院内巡視(安全ラウンド)でチェックしています。

③ 手術室での安全管理
人工膝関節術前マーキング

▲人工膝関節術前マーキング

【患者さんの受け渡し確認】
麻酔前の状態で、患者自身に「氏名」、「生年月日」、「手術部位」を名乗ってもらいます。
そして、手術室看護師が用意した電子カルテ端末の手術患者受付画面上で、「リストバンド」によるバーコード認証およびマーキング部位の確認を実施します。

手術室でおこなう全ての手術で、主治医は入室までに手術部位へのマーキングを実施します。
※マーキング方法は主治医の意思を尊重しますが、入室時にマーキングが確認されないと入室は認められず、手術室担当者がその場で主治医または執刀医を呼びマーキングをおこなった後に入室とります。

タイムアウト実施

▲タイムアウト実施

【タイムアウト実施】
主治医(執刀医)、麻酔科医、手洗い看護師、担当看護師などが揃って、 「患者氏名・手術部位・疾患および手術法・画像所見・合併症・術前バイタル・手術予定時間・予想出血量」などを確認して記録します。

④ 患者確認のためのバーコード付きリストバンド
人工膝関節術前マーキング

▲人工膝関節術前マーキング

当院では全国的にも早い時期である平成12年春頃から、入院患者さん・外来手術患者さんに「リストバンド」を装着させていただいています。まずリストバンド装着の必要性を説明し承諾を得ます。
現在は電子カルテですので、リストバンドには、姓名(カタカナ)・生年月日・患者ID番号および個別のバーコードが印刷されています。
患者さんご自身(またはご家族)確認の上で、原則として右手首に装着します。
装着期間は、入院の場合は入院時から退院まで、外来手術の場合は来院から全ての処置終了まで装着していただきます。

⑤ 血液製剤、点滴注射の3点認証

当院で患者さんに装着していただくリストバンドは手術・点滴・注射・輸血・その他の医療行為の場において患者さん本人であることを確認するためのものです。現在では、電子カルテシステムと連動したバーコードが印刷されており、看護師は輸血や点滴実施の際には、必ず「電子カルテ端末(患者カルテ)」と「患者さんのリストバンドバーコード」、および「施行者自身の身分証バーコード」の3つの認証バーコードを照合させて、システム認証が得られた状態を確認して実施しています。それにより患者さんは安全に、医師や看護師も安心して医療行為が施行できる体制を整えています。

血液製剤、点滴注射の3点認証
血液製剤、点滴注射の3点認証
血液製剤、点滴注射の3点認証
⑥ 輸血・血液製剤の確認
輸血・血液製剤の確認

実際の輸血時には、輸血実施チェック表の項目にそって、当該患者さんのカルテ番号・氏名(フルネーム)・血液型・血液製剤名・有効期限を照合します。(緊急時でもこれら5項目は省略できません。)

輸血・血液製剤の確認

準備する場合は、原則として医師と看護師または看護師2人で確認し、輸血する直前には血液製剤をベッドサイドに持参し、再度、患者リストバンドコード、輸血パックバーコード、看護師バーコードの3点認証を実施し、患者さんもしくはご家族に血液型と氏名を言っていただき再度確認の上で輸血を開始します。

⑦ 病棟看護での安全管理について

まず冒頭に竜操整形外科病院「看護部理念」をご紹介します。

1 安全・安楽・安心の看護を提供します。

2 生き生きと働ける魅力ある職場づくりをめざします。

3 看護者として、自己成長ができる基盤を身につけます。

理念の「1」にあげている患者さんの「安全・安楽・安心」を守ることは最も基本的なことであり、そのための病棟での取り組みを以下にあげてみました。
各病棟で安全対策の具体的な行動指針を掲げ、実践しています。
また年度末には評価・修正を行ないます。

  1. 看護実践の場で考えられるリスクには、「誤薬」「患者誤認」「転倒・転落」「院内感染」「機器の誤 操作」「誤刺事故」などがあります。これらに関する対応策を検討しマニュアルなどを整備して実践しています。
  2. ヒヤリ・ハット事例、マスコミで報道された事故などを全体で共有し、対策を検討しています。
  3. 患者さんが不安や疑問を言葉にして表せるようコミュニケーションづくりを心がけています。
    また、クリニカルパス(治療予定表)をお渡しして、質問も積極的にお受けするようにしています。

医療の現場は、煩雑かつ高度化しており、看護業務の内容も大変複雑になってまいりました。
15年以上にわたり医療安全の向上に努力をして参りましたが、いまだに他の大規模な医療機関でさえ左右取り違えなど人為的医療ミスに関する報道は多く、当院の看護職員も緊張常に緊張感をもって患者さんのケアに努めています。
そんな日々の中でも、患者さんとの心温まる触れ合いや、無事業務をやり遂げた満足感などが私達を支えているといえるでしょう。