整形外科を受診される方へ

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整形外科の始まりはヨーロッパです。フランスのパリ大学学長Nicolas Andryが、中世ヨーロッパで手や足の不自由な子どもが社会から疎遠されているが、手足を治せば立派な社会人になると信じて「整形外科」という医学の一部を打ち立てました。(1741年ですから、日本では徳川幕府8代徳川吉宗の時代です)

その原理は竜操整形外科病院でも忠実に実践するよう努力しています。すなわち患者さんの痛みや不自由を一日も早く取り除き、早期の社会復帰を目指して日夜努力しています。

以下に代表的な疾患や治療法をご紹介します。
思い当たる症状がございましたら、お気軽にご相談ください。

腰が痛い

腰が痛い

肩が痛い

肩が痛い

膝が痛い

膝が痛い

しびれる

しびれる

股関節が痛い

股関節が痛い

腰が痛い

腰痛

腰痛は誰でも一生のうち少なくとも一度は罹患する。性別、年齢、職業を問わず発生している。しかも、急激に発症する腰痛捻挫(急性腰痛症、ぎっくり腰、Hexenschuss魔女の一撃)から、慢性に経過する腰痛。腰痛のみならず、下肢放散痛、排尿障害をともなうもの、手術を要する腰痛まで症状は多彩に富んでいる。

厚労省の国民生活基礎調査によれば、病気やケガ等で自覚症状のある「有訴者」の統計では、男性では「腰痛」「肩こり」「鼻がつまる」、女性では「肩こり」「腰痛」「手足の関節が痛む」の順となっており、腰痛は人類のもっとも多い訴えとなっている。

2019年国民生活基礎調査

※参考:厚生労働省 2019年国民生活基礎調査

症状

痛み

  • 突き刺すような痛み
  • 安静に(寝ていても)していても痛い
  • 立てば痛い
  • 動けば痛い
  • 体を曲げたり、ねじったりしたら痛い
  • 朝起きる時に痛い
  • 歩けば痛い
  • 台所で痛い
  • 仕事で痛い
  • 物を持つと痛い
  • 大腿(もも)から膝、足まで痛い(痛みが走る)
  • 腹圧をかける(咳、排便時)と痛む

ケガ

  • 転んだ、尻もちついた、高い所から落ちた
  • いつのまにか骨折

しびれ

  • 足全体がしびれる
  • 咳、くしゃみで足に痛みが走る
  • 足(下腿、足部、趾)がしびれる、感覚が鈍い

体を動かす

  • 体が自由に動かせれない
  • 体を動かす(ねじる)と痛みがひどくなる
  • 腰をそらすと、お尻(臀部)や大腿後面に痛み、しびれる
  • おじぎ(前かがみ)がしにくい

排尿

  • 排尿がチビリ、チビリ
  • 尿が出にくい

主な疾患

1.いわゆる腰痛症

<診断のポイント>
一般的な諸検査では、原因が明確でない腰痛。慢性の筋疲労、姿勢性の原因が考えられるもの、腰椎の椎間関節の捻挫とも考えられるものなど。

2.腰椎椎間板ヘルニア

<診断のポイント>

最初は、腰痛、間もなく片側性の下肢しびれ、下肢放散痛を来す。姿勢が傾く、歩行困難。下肢から足部にかけての知覚異常、足部の筋力低下。稀に排尿障害。MRIが有用。

3.変形性脊椎症

<診断のポイント>
脊椎の加齢変化。レントゲン上、椎間板や椎間関節の狭小化、骨棘形成。腰痛の原因としては意義が少ない。

4.腰部脊柱管狭窄症

<診断のポイント>

高齢者の腰痛、下肢痛、しびれ感(坐骨神経痛)、立位を維持したり、歩行すると下肢のしびれ。椅子に座ったり、前かがみになると症状軽減する。排尿障害をともなうこともある。

5.腰椎分離症・腰椎分離すべり症

<診断のポイント>
分離症は、生まれつきのこともあるが、青少年の激しいスポーツ活動によって腰椎椎弓の疲労骨折によることが多い。分離症に引き続いて、すべり症が発生することがある。

6.変性脊椎すべり症

<診断のポイント>
中高年以後で分離症なしに発症し、腰部脊椎管狭窄症の一原因ともなり、手術を要することもあり、椎体の不安定性がある場合には手術を要する。

7.化膿性脊椎炎・腸腰筋膿瘍

<診断のポイント>
全身倦怠感をともない、体動が困難(脊柱不橈性高度)で発熱、白血球数増多、CRP高値の場合は、この疾患を疑って検査する。安静(コルセットも有用)と抗生物質の投与。

8.脊髄腫瘍

<診断のポイント>
腰痛ともに多くの症例で、下肢症状(しびれ感、麻痺、知覚麻痺、筋力低下)をともなう。レントゲン、MRIで診断できる。

9.転移性腫瘍

<診断のポイント>
腰痛、とくに安静にしていても持続性の腰痛。他部位の悪性腫瘍(ガン)の確認。

10.脊椎圧迫骨折

<診断のポイント>

転倒、尻もちをついたときなどに脊椎(椎体)に骨折が発生する。中高年、骨粗しょう症を有する女性に多い。

診断

脊椎の症状

背骨(脊柱)の変形、動きなどの観察

下肢の症状

坐骨神経の伸展テスト(下肢挙上テスト)、下肢腱射(含 病的反射)、筋力、知覚(痛覚、触覚など)
※この診察によって、単なる腰痛なのか、神経症状をともなった腰痛なのかを診断し、次の段階に移る。

レントゲン

骨の形状、椎骨のアライメント骨と骨との関係(隙間)、椎間板の痛み具合がある程度わかる骨の質、骨折、骨の腫瘍などの診断。

CT

X線撮影とほぼ同様だが、骨の形、骨の内部が詳しくわかる。

MRI

軟骨と神経との関係などがよくわかる。

治療

保存的治療

  • 薬物療法(含 注射)
    • 鎮痛剤(痛み止め)
    • 筋弛緩剤(筋肉を柔らかくする)
    • 精神安定剤(痛みを落ちつかせる)
  • リハビリ
    • 温熱治療
    • 電気治療
    • 体操療法
    • 日常生活訓練
    • 機能訓練(運動器の体操療法)
    • ロコモ体操
  • ブロック療法(神経を一時的に麻痺させる注射)
    • 圧痛点注射(トリガーポイント注)

※当院では上記の保存的療法を種々組合せ患者に合わせた治療を行っています。

手術療法

当院では以下の手術を行っています。

手術

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎(椎=骨)と腰椎との間にあって、いわばクッションの役目をしている椎間板(軟骨)が何かの拍子に傷んで、飛び出し、そこにある神経(神経根という)に当たり、腰痛と下肢(あし)の痛み(放散痛、走る痛み)としびれ感が生ずる疾患。

好発年齢

20歳代、30~40歳代など活動性の高い年齢層にみられることが多いが、最近では10歳代でもみられることも多く、50~60歳代にも発症する。

好発部位

腰椎は5枚あり、1番よく動く第4、第5腰椎間(L4/L5間と略す)、次いで第5腰椎、仙椎間(L5/S1と略す)が多いとされている。

症状

  • 腰痛と片方の下肢(あし)の痛み(痛みが走る、放散痛)及び、しびれ感がある。
  • 体を動かしたり、労働、スポーツで痛みが増悪する。
  • 安静で痛みが軽くなることが多い。
  • 急性に発症すると身動きに困り、2~3日すると腰痛は少し軽くなるが、下肢症状(放散痛、しびれ感)が鮮明になることが多い。
  • 下肢痛は、咳やくしゃみ、また排便時の“きばり(いきむ・いきみ)”で増悪する。
  • 下肢のしびれがひどくなり、足の筋力が低下すると、歩行時スリッパが脱げやすくなったり、足首が上に持ち上げれなくなる(下垂足)こともある。
  • 腰椎椎間板ヘルニアが巨大で椎間板のある部位の真ん中に出ると、両下肢にしれびと筋力低下、排尿障害(時に尿閉→この場合には、緊急手術が必要)をともなうこともある。
  • 慢性期になると腰痛、下肢放散痛は軽減するが、体を一定の位置(例えば腰をそらすなど)にすれば痛みが下肢に放散し、下腿、足部の触った感じ(知覚障害)が出現する。スリッパがいつのまにか脱げていることもある。

問診

臨床所見(他覚所見)

  • 疼痛性跛行
    急性期には、腰をかばうような肢位、腰に手をあてて一見支えるような姿勢、腰を伸ばすと痛いので、前かがみになったり、体をゆがめて歩く。
  • 姿勢(脊柱所見)
    痛みのため少しでも痛みの楽な方向に体を曲げている(疼痛性側彎)。
    体を真直ぐにしようとすると下肢に放散痛がきたり、腰を伸ばす方向に動かすことが困難で、伸びても臀部や大腿(もも)後面、下腿に痛みが走る。当然、腰の動きは低下する(脊柱不橈性)。
  • 神経根緊張徴候(下肢伸展挙上テスト、SLRテスト、またはラセーグ徴候)。
    腰椎椎間板ヘルニアの最も重要な疼痛誘発テストである。
  • 神経脱落所見
    腱反射の低下、消失
    知覚障害(痛覚(ハリ刺激)、触覚の低下、消失、過敏)
    足部の筋力低下(足首の背屈、足趾の背屈、屈曲)

画像診断

腰椎椎間板ヘルニア

レントゲン

急性期単純X線像だけで腰椎椎間板の診断はできない。この疾患以外に、変形性脊椎症、腰椎圧迫骨折、腰部脊柱管狭窄症の示唆、悪性腫瘍の腰椎転移など鑑別の一助となりうる。慢性期になると、腰椎側画像で椎間板腔が狭小化している部位があれば、腰椎椎間板ヘルニア(L4/L5、あるいはL5/S1が多い)も疑われるが確定診断にはなりえない。

MRI

腰椎椎間板ヘルニアの診断にもっとも役立つ検査法である。

治療

保存的治療

腰椎椎間板ヘルニアの多くは手術をしなくても症状が軽快することが多い。 かといって、長期間寝ていると、体幹あるいは全身の筋力が衰え結果はよくないことが多い。安静と運動を組み合わせた保存的治療が原則となる。

  1. 患者への指導、日常生活の指導
    腰椎椎間板ヘルニアは手術を要することはそんなに多くはなく、大部分は保存的治療(手術をしない治療)で軽快すること。 日常生活での姿勢、動作などが必要なことを理解していただく。 また、疼痛の程度に応じて、日常生活動作を加減し、安静は必ずしもよい方法ではないことをよく理解してもらう。
  2. 薬物療法
    消炎鎮痛剤(アスピリン、NSAIDsなど)
    薬剤の副作用に注意を要する。
  3. ブロック療法
    硬膜外あるいは神経根ブロックも効果がある。
  4. 理学療法(物理療法)
    温熱療法、電気治療など。
  5. コルセット
    腰部の軽度の安静と安定性を補強して、腰部の負担を軽減する。
  6. 運動器リハビリテーション(体操療法)
    腰背筋や腹筋を強化して、腰部の支持性の強化を目指す。継続的に行うことが重要。

手術的治療

腰椎椎間板ヘニルアでは必ずしも手術は必要ではない。
手術の必要性を考える場合としては、

  • しっかりとした保存的治療を長期間(およそ1~3ヵ月間)行っても症状の改善がみられない。
  • 片方の下肢(あし)に力が入りにくい、足首が十分に自分の力で上に向きにくい(下垂足)、しびれが続いている。
  • 排尿障害がみられる。
  • 腰痛と下肢痛(坐骨神経痛)が激烈なとき。
  • 日常生活が困難。

などである。

手術には、腰の後側を切開して(後方アプローチ)ヘルニアを摘出する方法と、腹部を切って腰椎の前方からアプローチする方法があるが、現在多くは後方アプローチの手術である。

椎弓切除術によるもの

腰の後側の真ん中を切開して、椎弓という部分に達し、その椎弓の一部を削り(開窓)、
神経根を寄せて(避けて)ヘルニアを摘出する方法。

Love法

肉眼的に病巣部の上下の椎弓の一部を削り、神経根を避けてヘルニアを摘出する。
過去の腰椎椎間板ヘルニアの手術では、ルーチンの方法であった。

顕微鏡下ヘルニア摘出手術(Casper法)

腰部に小切開を加え、術野を顕微鏡(4倍程度)で拡大して、椎弓の一部を削り、ヘルニアを摘出する。
肉眼的に確実にヘルニアを摘出でき、切開も小さくて済む方法。

鏡視下ヘルニア摘出術

内視鏡による手術で、切開創は小さく、ヘルニアを摘出できるが、手術時間は術者の手技に依る。

前方法

腹部から腰椎に到達する方法。
椎間板摘出と同時に腰椎前方固定術(腰椎と腰椎を癒合させる手術法)を行うこともできる。現在は行われることは稀である。

手術後のケア

どのような手術法によっても、腰椎に手術というストレス(キズ)を負っている訳なので、当分の間(2~3週間程度)は過激な動作は控え目にする。術後の日常生活での姿勢、体動も腰に負担がかからぬように注意する。多くの病院では、短期間でも腰椎コルセットの装着の必要性を認めている。手術後は再発防止のため、腰痛体操が必要。

手術後の経過

手術方法によっては、術直後(1日目)から起立歩行できるものから、数日間安静を要することがある。短期間の腰椎コルセットが必要なこともある。下肢の痛みは、術直後にとれ、足の動き(筋力)は早急に回復するが、足部のしびれ感(知覚鈍麻)は術後かなり遅れる。

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症とは、背骨の連なっている脊柱の脊柱管内に脳から起こっている脊髄神経が脊柱管内の骨あるいは周囲軟部組織によって押さえつけられて、神経症状が出てくる病気である。

好発年齢・好発部位

高齢者、男性の変形性脊椎症にみられることが多い。変性すべり症による腰部脊柱管狭窄症は女性に多い。L4/L5に多い。

症状

神経性間欠跛行

腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状。

  • 腰痛、両下肢痛、しびれ感、灼熱感、ほてりなど、臀部、会陰部の異常感覚があり、残尿感や尿意逼迫感もある。
  • これらの痛み、しびれ感は、真直ぐに立って歩くと出現し、しゃがみ込んだり、椅子に座ると楽になり、連続歩行距離が50m~100m程度で休みたくなる。
  • 間欠性跛行は、下肢動脈の閉塞性動脈硬化症との鑑別が必要である(足背あるいは後頸骨動脈、膝後の膝窩動脈の拍動が欠如している)

画像診断

腰部脊柱管狭窄症

レントゲン

確定診断は出来ないが、脊柱管のおおよその大きさを知ることが可能で、変形性脊椎症、脊椎分離症、脊椎分離すべり症、脊椎変形性すべり症の所見を把握することは必要である。

MRI

脊柱管内での脊髄と骨、椎間板、黄色靭帯馬尾神経、神経根などとの関係がよくわかり、診断のみならず、治療方針の大いなる参考となる非常に有用な検査。

CT

脊柱管の形状、特に脊柱管を骨性突起物で狭窄している状況を知るのに有用。

治療

腰痛よりも、下肢のしびれ感、脱力感が主体で、長時間の立位や歩行、腰椎の後屈により、異常感覚が生ずる「馬尾神経型」は保存的治療は困難である。

保存的治療

疼痛の薬物療法(消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、プレガバリン)以外に末梢血管拡張作用のあるPGE(プロスタグランジン)などを用いる。

神経ブロック

硬膜外ブロック、神経根ブロック、などが有効なことがある。

装具療法

腰部脊柱管狭窄症用の腰椎コルセットもかなり有用である。

運動器リハビリテーション

温熱療法、電気治療とともに腰痛体操が効果的なことがある。

手術療法

馬尾症状のある患者は、保存的治療には反応しがたい。手術療法を要することが多い。脊髄を圧迫している骨性障害物あるいは軟部組織を除去する。そのためには、椎弓切除術を行って、これらを取り除く、除圧が主体となる。しかし、腰椎すべり症を合併したり、腰椎の不安定性がある場合には、脊椎固定術も必要である。

脊椎圧迫骨折

中高年の脊椎に屈曲圧迫力が働くことにより(転倒、尻もちをつく)、脊椎(椎体)に骨折が発生する。多くは骨粗鬆症が基盤にある。高齢社会を迎えて、骨粗鬆症患者に明らかな転倒などの外傷がみられないのに、脊椎圧迫骨折が発生し、「いつのまにか骨折」と巷間で言われている。

好発年代

中高年、骨粗鬆症を有する女性に多い。ただし、青壮年の男性では高所からの落下によるものが多い。

好発部位

胸郭で可動性の少ない胸椎と比較的可動性のよい腰椎との境界部(胸腰椎移行部)、すなわち、第11、12胸椎、および第1、2腰椎に多い。

症状

腰背部痛、とくに体動により増悪する。
「いつのまにか骨折」の場合には、体動とくにお辞儀によって病院を受診することがある。
ひどい外傷の場合には、脊椎の脱臼骨折となり、脊髄損傷(対麻痺、パラプレンジア)を生ずることもある。そのため脊椎骨折が疑われる患者さんでは下肢の神経症状の有無の確認、万一、脊髄損傷を合併しているときは排尿、排便(膀胱直腸障害)を来す。脊椎の激痛をともなう可動性の低下、胸腰椎移行部の叩打痛。

画像診断

脊椎圧迫骨折

レントゲン

脊椎椎体の楔状変形の有無を確認する。

MRI

診断するうえで最も確実な検査である。

治療

椎体の脱臼が無い場合

  • 自分で動ける範囲での生活
  • コルセットを装着しての生活
  • 運動器リハビリテーション、体操療法

椎体の破裂骨折

椎体の前方、真ん中あたりの圧迫骨折により、椎体の後方(後壁)が脊柱管内に突出し、脊髄神経への圧迫が起こる危険性がある。この場合は、骨片の整復が必要であり、椎体形成術が必要である。

椎体形成術

脊椎圧迫骨折で、椎体の後壁の破壊によって骨片が脊椎管内に突出する場合に行う。X線透視下に針を後方から刺して、椎体内にハイドロキシアパタイトあるいは骨セメントを注入して固定する方法。全身的な侵襲が少ない。

肩が痛い

肩関節の疾患では、肩関節の痛みと可動域低下(関節の動きの低下)により、日常生活、例えば、更衣、棚の上の物を取ったり、上げたりするにも不便であり、疾患によっては夜間就眠も妨げる痛みがある。

肩関節周囲炎・凍結肩

日本では、昔から50歳くらいに好発する肩の痛みと可動域低下を“五十肩”といってきた。このいわゆる五十肩の中で、腱板断裂や石灰化腱炎などの病態が順次明らかになり、これらを除いた肩の痛みと肩関節可動域低下の疾患をいわゆる五十肩、凍結肩(frozen shoulder)と定義されている。

症状

症状は、

  • 炎症期
  • 拘縮期
  • 回復期

と経過し、6ヵ月から1年間で治療する。

疼痛で発症し、肩を動かす、例えば更衣、寝返りで痛みが出て、更衣などの動作が困難となる。痛みは、安静時痛、夜間痛が生じ、肩関節の動き(可動域)が悪くなり、更衣などの動作に困る。しかし、夜間痛は石灰化腱炎の方がはるかに高度である。

診断

痛みと肩関節可動域低下、肩関節部の圧痛、肩関節の可動痛によって容易に診断できる。

画像診断

肩関節周囲炎・凍結肩

レントゲン

いわゆる五十肩では特徴的な所見はない。関節周辺の石灰化像の有無の所見が必要である。

MRI

腱板の損傷の診断に有用である。

治療

保存的治療

  • 肩関節の安静
    三角布の使用もありうる
  • 薬物治療
    消炎鎮痛剤
    ヒアルロン酸の関節内の注射
  • 運動器リハビリテーション
    肩関節の拘縮がみられたら、コッドマン体操などの可動域訓練が必要である。

肩関節石灰化腱炎

原稿(未)

膝が痛い

1.変形性膝関節症

<診断のポイント>

中高年の女性に多い。内反膝(O脚)変形をともなう。動作し始め(椅子からの立ち上がり、歩き始め)に疼痛を訴える。関節水腫を合併することが多い。

2.靭帯損傷、捻挫

<診断のポイント>
膝関節は外力に無防備な関節で激しい外力から軽備な外力で靭帯・半月板の損傷をうみやすい。コンタクトスポーツ(サッカー、ラグビーなど)に多い。

3.半月板損傷

<診断のポイント>

いわゆる膝関節捻挫やしゃがみ込みでの外力で発生することが多い。半月板が断裂して関節内に嵌頓することもある。若年者では、円板状半月板によることも少なくない。

4.関節リウマチ

<診断のポイント>
関節リウマチでの手指関節に次いでの好発部位。腫脹、関節可動での疼痛、手指の朝のこわばり(Morning Stiffness)あり。

5.Osgood-Schlatter病

<診断のポイント>
膝蓋骨下方の脛骨粗面の痛み(運動時痛)と同部の膨隆、圧痛。成長期の男子(スポーツ運動)に多い。

6.ジャンパー膝

<診断のポイント>
激しいスポーツでジャンプを繰り返し行う競技(バレーボール、バスケットボール、ランニングなど)で膝前面の膝蓋骨中心にその上下の筋腱、靭帯、骨に損傷を来し、疼痛、腫脹、握雪音、骨性隆起などが生ずる。

7.偽痛風

<診断のポイント>
膝関節に発症することが多く、男女差はなく、高齢者に多い。急性期には、痛風発作様の激痛を訴え、関節液が貯留し、全身の発熱、白血球増多、CPR値上昇し、化膿性膝関節炎とまぎらわしい。関節液にピロリン酸カルシウムCPPDが証明できる。関節穿刺洗浄、注射、ステロイド関注で軽状する。

8.特発性骨壊死

<診断のポイント>
60歳以上の女性に多い。原因なく、特発的に発症する。大腿骨内顆関節面にレントゲン像で特異的な骨透亮像がみられる。MRIは有用で初期にさらに有用。関節軟骨直下の骨組織が母床から離断し、壊死となる疾患である。この部分を覆う軟骨部分が剥離していることが多い。

9.離断性骨軟骨炎

<診断のポイント>
男性に多く、女性の3~4倍、思春期から20歳代に好発する。約20%は両側性発症するといわれている。骨壊死部分が離断していないうちは運動後の不快感、疼痛程度であるが進行すると運動時痛が激しくなり、走行、階段昇降が困難となる。病巣部が脱落(離断)すると、関節のロッキング(嵌頓)や関節水腫を来す。診断はレントゲンによるがMRIはより有用である。関節鏡で十分に観察し、手術方法を決める。

10.化膿性膝関節炎・化膿性骨髄炎

<診断のポイント>
膝関節に血行性に病原菌が伝播される場合と外的因子(関節内注射など)による場合がある。前者は小児に多く、後者は関節内注射を行う成人にみられる。感染は急激に進展し、関節軟骨を傷害して将来の関節機能の廃絶をも来す危険がある。起炎菌は、黄色ブドウ球菌が多い。早期に抗生物質の投与と関節の安静、関節洗浄などを行う。

変形性膝関節症(OA)

関節は、軟骨と軟骨との“すり合わせ”によって円滑に動いている。この軟骨が傷んでくる(変性する)と磨耗と軟骨の栄養障害によって、骨の増殖性変化(骨棘)と関節滑膜(関節の袋)の肥厚と炎症が起こり、関節痛および関節の動きが悪くなり、関節水腫(関節腫脹)を来す。膝関節に起これば、膝痛、腫脹、関節可動域低下(動きが悪い)、関節変形がみられる。

好発年齢

50歳以上の女性で、特に肥満の方。

症状

変形性膝関節症
  • 膝痛(特に動き始めや座って立ち上がる時、階段昇降のうち特に階段を降りる時)
  • 関節腫脹(関節水腫)
  • 関節可動域低下(特に膝関節の伸展障害)
  • 圧痛(関節内側)
  • 変形(O脚になりやすい)
  • 歩行障害

発生原因

  • もともとの病気がわからない(一次性変形性膝関節症)
  • 外傷(膝関節内骨折など)、感染(化膿性、関節リウマチ)など原因が明らかなもの(二次性変形性膝関節症)

治療

保存的治療

  • 日常生活の工夫
    体重のコントロール、膝関節の負担の軽減(正座、階段昇降、坂道の歩行など)、杖の使用
  • 薬物療法(消炎鎮痛剤(内服、座剤、外用薬))
  • 関節内注入
    ヒアルロン酸の関節内注射
  • 装具療法
    膝サポーターなど膝装具
    足底板(O脚を矯正するような肢位にする)
  • 運動器リハビリテーション
    膝関節周辺の筋力、下肢筋力の増強(特に、膝伸展筋力)

手術療法

  • 高位脛骨骨切り術(HTO)
    O脚を矯正して、膝関節への過荷重の矯正
  • 人工膝関節
    人工膝関節は、膝関節の痛みをとり、膝関節の安定性を獲得し、歩行能力を回復させるが、正座は出来ない。
    1. 人工膝関節単顆置換術(UKA)
      膝関節の内側部分だけ入れ替える。
    2. 全人工膝関節置換術(TKA)

膝半月板損傷

膝半月板は内側と外側にあって、膝関節内で関節の動きにともなって、クッションの役目をしている。膝に体重がかかって捻る力が加わると、半月板に亀裂が入って痛みや膝関節の可動域低下(ロッキング)などが生じる。

症状

  • 受傷直後から膝痛を発症し、半月板の辺縁まで損傷が及んでいる場合には、膝関節血腫が生じる。
  • 半月板の辺縁部の縦断裂では、断裂した半月板が関節内にはまり込み(嵌頓)、膝が屈曲したまま伸展不能となる。このような場合には損傷した半月板はバケツ柄状断裂(bucket handle tear)となる。

画像診断

膝半月板損傷

レントゲン

半月板損傷の重要な情報は得られにくい。

MRI

診断するうえで最も確実な検査である。

診断

受傷機転の詳しい聴取と、その後の経過が正しい診断に役立つ。

  • 理学所見
    膝関節の可動域、とくに膝関節伸展障害あるいは、伸展による疼痛の発生。過伸展、過屈曲による疼痛の誘発。
  • 関節裂隙の圧痛
  • 半月板損傷の誘発テスト
    断裂した半月板を捻じったり、関節面間に挟み込むことによって痛みや異常音を誘発するもの
    • マックマレーテスト(Mc Murray)
    • アプレーテスト(Apley)

確実な最終的な診断は、関節鏡視下で行われる。

治療

若年者では、痛みが楽になるまで運動器リハビリテーションを行う。痛みがとれない場合には、関節鏡視下に断裂部を縫合するのが原則である。

しびれる

手のしびれ

“しびれ”という場合には、皮膚の触覚(筆先で触る)、痛覚(針でチクリク)の異常が主体であるが、中には手指の自由が利きにくいことも含めて訴える場合もある。客観的には“しびれ感”という時には、触覚、痛覚の欠落を指している。皮膚感覚には、この他にも圧覚、温度覚も必要である。

手根管症候群母指、示指、中指(環指)のしびれ

手の使い過ぎや靭帯の肥厚などによって、手首(手関節)、掌側(手のひら側)の付け根の所で、首から続いて下りてきている正中神経が締め付けられて発症する。

好発年齢など

中高年の女性(主婦)に多い。
手をよく使う職業やスポーツに従事する人にみられる。

原因

  • 橈骨遠位端骨折(コレス骨折)
  • 透析アミロイド
  • 関節リウマチ
  • ガングリオン(による圧迫)

症状

  • 母指、示指、中指、環指の半分の橈側(母指側)の知覚異常、母指球の筋萎縮(筋肉がうすくなる)(手掌の親指の根元の筋肉の高まり)
  • Tinelサイン
    手首の掌側を検者の指先または打腱器で叩くと、指先にしびれ感を覚える。
  • Phalenテスト
    手首を最大限に屈曲(掌屈位)にして、1分間すると指がしびれてくる。
  • パーフェクト“O”テスト
    母指と示指を丸めて完全な円になるが、この疾患では、母指の対立筋不全のため、“円”を作れない。

診断

しびれ感とその範囲、筋萎縮、Tinelサイン、パーフェクト“0”テストなどで臨床上の診断は可能。筋電図学的検査を行えば、確定診断できる。

治療

しびれ感とともに筋萎縮が認められれば、手術をする。それまでは、手首を動かすのを少々抑制するために、夜間手首の動きを抑制する(夜間副子)。

肘部管症候群小指(環指)のしびれ・肘関節の障害で小指、環指の一部のしびれ

原因

  • 肘関節の酷使(スポーツ、職業上など)による変形性肘関節症の骨棘(骨のトゲ)、靭帯の肥厚
  • 小児期の肘部の骨折による変形(上腕骨外顆骨折による肘の変形外反肘)。
  • 関節に発生した腫瘤(ガングリオン)。
  • 上記などによる尺骨神経の絞扼(しめつける)による尺骨神経の神経障害。

症状

  • 小指、環指(尺側、小指側)のしびれ(知覚異常)
  • 箸の使用など手指の巧緻運動障害
  • 環指、小指の運動障害
  • 手掌の小指の下の筋肉(小指球)の筋萎縮
  • 母指、示指の間の筋肉、手背での中手骨間の筋肉の萎縮
  • 示、中、環、小指の指の付け根を曲げて、指の他の関節を伸ばすこと(=内左筋プラス・ポジション)ができない(=内左筋マイナス・ポジション)。
  • 肘関節部で内側を指で叩くと手指にしびれ感が発生する。

診断

  • 上記症状、特に筋萎縮と内左筋プラス・ポジションの可否が重要。
  • 肘関節のレントゲンでの変形性関節症の有無。
  • 筋電図学的検査(神経の伝導速度)。
  • 指を伸ばして、その間に紙を挟んで力を入れる。その紙を検者が引っ張って容易に抜ければ尺骨神経麻痺(Froment症候)である。

治療

手部の知覚異常に筋萎縮が加われば手術。
肘関節部で尺骨神経の圧迫をとり、緊張を緩める。

頚椎症性神経根症・頚椎椎間板ヘルニア・頚椎症性脊髄症手のしびれ、シャツのボタンかけの不自由

頚部痛、頚椎の動きの低下(可動域低下)、肩~肘あるいは、手への痛み、もしくはしびれ感がある疾患。

  • 一側の上肢の痛み(肩からの放散痛)、手のしびれがある場合は、頚椎症性神経根症(時に頚椎椎間板ヘルニア)。
  • これらの症状に手指の巧緻運動障害(箸の使用、ワイシャツのボタン掛けなど)と体幹、下肢の知覚異常、歩行障害、頻尿(便秘)などがあれば頚椎症性脊髄症を考える。

前者は、上肢を支配している神経根(脊髄の枝)の障害、後者は、脊髄本幹の障害。

症状

頚椎症性神経根症(頚椎椎間板ヘルニア)

  • 一側の肩から肘、稀には手指にかけての痛み。
  • 頚を動かす、あるいは検者が頚をそらすと肩~肘、時には手部にかけて痛みが増強する。
  • 多くは、天井を見ると痛みが出る。
  • 障害の神経根によって、肘関節の屈曲、伸展、手首の筋力低下。
  • 障害の神経根の支配領域のしびれ感、知覚異常。
  • 一側の上肢痛、知覚異常、上肢の筋力低下。

頚椎症性脊髄症

  • 上記症状に、手指巧緻運動障害(箸の使用、ワイシャツのボタン掛けの稚拙など)、歩行障害、排尿障害が加わる。
  • 上・下肢の筋力低下
  • 知覚障害
  • 歩行障害
  • 膀胱直腸障害

画像診断

頚椎症性神経根症

レントゲン

  • 頚椎の変形性脊椎症の所見
  • 頚椎の変形
  • 骨棘形成
  • 椎体間の狭小
  • 椎体のアライメント(配列)の不整
  • 脊柱管前後径(12mm以下では病的)

MRI

  • 椎間板の変性像
  • 脊髄の圧迫像

診断

上記症状と画像診断による

治療

頚椎症性神経根症

多くは保存的治療

  • 薬物療法、リハビリテーション

頚椎症性脊髄症

  • 歩行障害、膀胱直腸障害が出れば手術

手術

前方除圧

  • 責任病巣(椎間板)が単発(時に2椎間)であれば、頚椎の前方アプローチ。
  • 椎間板を抜いて、そこに自家骨(自分の骨盤(腸骨))あるいは人工骨を移植する。

後方除圧

  • 責任病巣から多椎間にわたる場合には椎弓形成術(椎弓を骨切りして、脊柱管を拡大する:椎弓形成術と呼ぶ)。
  • 前方除圧術、後方除圧術(椎弓形成術)ともに数日間、局所の安静を要する。

頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL)

脊椎の頚椎、胸椎、腰椎から仙椎まで、脊椎椎体の後、すなわち脊柱管の前壁にあたる部分に後縦靭帯が走っており、この靭帯が肥厚し骨化が起こることがある。そうすると、脊髄が入っている脊柱管が狭くなり、脊髄を圧迫して脊髄症を発症する。症状、治療は、頚椎症性脊髄症と同様。

頚椎後縦靭帯骨化症

黄色靭帯骨化症(OYL)

脊柱管の中で前壁にあたる部位にあるのが後縦靭帯で、後方にあるのが黄色靭帯である。この靭帯も日本人では、肥厚・骨化することがあり、脊柱管内で脊髄を圧迫する疾患がある。好発部位は、中高年の男女の胸椎下部(特に第10、11胸椎部)に起こることが多い。

症状

  • 両下肢にしびれ感
  • 筋力低下
  • 歩行障害
  • 膀胱、直腸障害をともなうこともある
  • 下肢腱反射亢進病的反射

診断

黄色靭帯骨化症

症状とレントゲン、詳しくはCT撮影により骨化部の診断を行う。MRIで脊髄の圧迫状態の把握を行う。

治療

軽症では、保存的治療(生活指導、装具療法)
進行例では、手術的治療(椎弓切除術)

股関節が痛い

股関節痛

股関節は人体のほぼ真ん中に位置し、関節の動く範囲(可動域)は、人体の関節の中で肩関節に次いで大きい。歩行時、上半身を支え、上半身の前方移動を助けている。

股関節の疾患では、歩行を中心とした移動動作に障害をもたらす。歩行障害(跛行)、立位保持、座位(とくに、あぐら座り)、就寝時の障害、階段昇降、靴下を履く動作などに困ることが多い。股関節障害は、乳幼児から高齢者にまで及ぶ。股関節疾患には、家族性、遺伝性が関与している疾患や、アルコールの多飲、薬剤の投与による副作用による疾患もある。股関節の病気の症状は、痛みと歩容異常が二大症状である。

変形性股関節症

原因

関節軟骨の変性、磨耗により関節の破壊や反応性の骨増殖が生じることで、股関節に変形を来し、股関節痛と股関節の動きが悪く(可動域制限)なる。

この疾患を来す原因は、

  • 原因不明の股関節症(一次性股関節症)
  • 原因がはっきりしている股関節症(二次性股関節症)

がある。

二次性股関節症を来す元の疾患は、

  1. 先天性のもの
    • 発育性股関節形成不全
      (昔は、先天性股関節脱臼、CDH、LCCと呼んでいた)
  2. 炎症性疾患
    • 化膿性股関節炎
    • 股関節結核(昭和30年頃までは多数)
  3. 外傷
    • 大腿骨頚部骨折
    • 股関節脱臼骨折
    • 骨盤(寛骨臼)骨折
  4. 大腿骨頭壊死
  5. 小児期の疾患後
    • ペルテス病
    • 大腿骨すべり症

症状

痛み

初期は、安静にしていれば痛みは無いが、体の動き始めに痛く、動いているうちに痛みは軽くなる。やがては、歩くたびに痛くなったり、寝起きなどの動き始めに痛みが出る。
次第に、寝返りすると痛くて目が覚めるなど体動で痛くなり、階段の昇降が苦痛になる。
膝痛や腰痛を伴うことも多くなる。

関節の動きの低下

進行すると、股関節の曲げ伸ばしが悪くなり、股を拡げる運動が低下する。靴下が履きにくくなり、あぐら座りが不十分となる。
寝た姿勢で、良い方の股関節をぐっと曲げると悪い側が、自然に曲がってきて、悪い側の膝の裏が床に着かず、浮いてくる(トーマス肢位という)。

跛行

痛みとともに体を振って歩くような跛行になる。

脚が短くなる(下肢短縮)

大腿骨骨頭が変形したり、亜脱臼位となり、患肢が短縮する。

筋委縮

悪い側の臀部~下肢の筋萎縮がおこる。

画像診断

変形性股関節症

レントゲン

必ず両股関節の足を揃えて撮影する。

  • 大腿骨骨頭、寛骨臼(骨盤側の骨頭を受ける穴)の形状、位置
  • 関節裂隙(すき間)
  • 骨の性状(骨に孔が開いているなど)(骨構造の変化)

CT

レントゲンとほぼ同じチェック、骨の形状、質はCTの方がよくわかる。

保存的治療

レントゲンで前期、初期、進行期、末期と病期分類というものが学会で決められており、痛みや職業(日常の活動性)、年齢によって治療法が決まる。

治療

この疾患では、最終的には手術が必要となる。手術の中では、人工股関節置換術が最も効果的な治療である。しかし、この人工股関節は体内に挿入されて、何年間障害なく使用できるか、はっきりした証拠がなく、昭和40年代は約10年間、次いで15年間(?)、20年間(?)と医師によって発言がちがっていた。しかし、現在では術後の生活のやり方によっては、25年~30年は大丈夫だといわれている。従って、この人工股関節置換術に踏み切る年齢(人生85年として50歳代)までにどのような治療をするか、ということを前提として治療法を考える。

治療法の選択には、

  • 年齢
  • 職業、日常の活動性
  • レントゲン所見
  • 痛みの程度

を考慮する。

保存的治療

痛みが軽度(初期、進行期の一部)で、あまり活動性の高くない方は、

  • 鎮痛剤
  • 体重のコントロール
  • 杖の使用
  • 長距離歩行の制限
  • 運動器リハビリテーション(股関節周辺の筋力強化)

を行う。

手術的治療

骨切り術

股関節は、骨盤側の寛骨臼と大腿骨頭から構成されており、この両者の適合性が不良ならば、関節の動きが悪く、そのまま荷重して(歩いて)いると、段々と関節の変形は進行する。この両者の適合性を良くすることによって、痛みを軽くし、将来の股関節の変形の悪化を予防することを目的とする。骨切り術は、50歳未満で股関節痛が強く、比較的活動性の高い方に行う場合が多い。

大腿骨骨切り術

大腿骨側と骨盤側のどちらかの骨を切って、大腿骨の骨頭の向きを変えて、関節の適合性を良くする手術。

骨盤骨切り術

骨盤の寛骨臼が大腿骨頭を容れる穴が浅い場合に、骨盤の一部を切り、この穴を深くして体重のかかる軸圧を均等にする方法。近年は、寛骨臼回転骨切り術が行われている。

人工股関節手術

股関節の無痛性、可動性、歩行力を獲得できる、すばらしい治療法(手術法)であり、1950年代から世界中で行われるようになった。最初は、金属とポリエチレンで作られた人工股関節を骨セメントで骨盤と大腿骨に接着させる方法であったが、その後の研究、発展により、骨セメントを使用しなくても骨との接着が可能となった。このことにより、この手術の適応の年齢の低減化と長期の使用が可能となった。

現在では、多くの病院で人工股関節置換術が行われているが、50歳以上の方にはこの手術法が第一選択となっている。

大腿骨頚部骨折・大腿骨転子部骨折

原因

高齢者の転倒によって発生することが多い。
四肢(手足)の骨折といえば、

  • 交通災害
  • スポーツ外傷

などによって発生することが多いが、この骨折は、家庭内での事故など軽微な外力で発生している。すなわち畳の上で転ぶ、布団につまずいて転ぶ、夜間トイレに立って廊下で滑り転ぶ、玄関でつまずいて転ぶなど、軽微な事故で発生する。ただし、成人男子で起こる場合は、強力な外力(高所からの転落、交通事故での自動車同士の正面衝突など)により発生する。高齢者の場合、骨粗鬆症の存在することが多い。

症状

大腿骨頚部骨折では、骨折部のズレ(転位)が軽微な場合は、事故直後には股関節痛は軽く、起立歩行も可能なことがある。ただし、起立歩行などによって骨折部が転位すると、起立、歩行時に痛く、歩行は十分できなくなる。寝てみると患肢(悪い方の脚)は、外を向き(外旋位)、脚が短くみえる。

大腿骨転子部骨折では、受傷直後が股関節の痛み、患肢は外旋位をとり、患肢に触れるだけで激痛を訴える。高齢女性が転倒して「あしが痛い」場合、非常に痛がっている場合には、大腿骨転子部骨折を疑う。

特徴

2種類の大腿骨頚部骨折

大腿骨頚部骨折といっても、2種類に分類され、両者は特徴から治療法までかなり異なる。

  • 大腿骨頚部骨折
    大腿骨頚部骨折(狭義)
    (大腿骨頚部内側骨折)
    (大腿骨関節包内骨折)
  • 大腿骨転子部骨折
    (大腿骨頚部外側骨折)
    (大腿骨頚部関節包外骨折)

と名称的に分けられていた。( )内の病名は主にドイツ語圏での病名であったが現在では上掲のように病名がついている。

病名 大腿骨頚部骨折 大腿骨転子部骨折
発症年齢 高齢者(60~70歳代) 高齢者だが、大腿骨頚部骨折より、
10歳代程度高齢(80歳代が多い)
疼痛 (+) より激しい
下肢の変形(外旋位) (+) (++)
手術 必要(人工骨頭も可) 必要(人工関節は一般的には不可)
骨癒合 人体の骨折でもっとも骨癒合が悪い 骨折部の骨癒合良好
血行 骨頭への特殊な血行により骨頭壊死が起こりやすい 出血多量のことが多い

大腿骨頚部骨折の特徴

女性の高齢者で、かつ骨粗鬆症の患者さんに多い骨折であるとともに、大腿骨頚部骨折(大腿骨転子部骨折は除く)は、人体の骨折の中でもっとも骨癒合の悪い骨折である。高齢の女性にこの骨折で多いのは、骨粗鬆症はホルモンなどの関係で女性に多いからと考えられているが、体格の割には骨盤の幅が大きいなどの説もあるが、高齢者は男性よりも女性に多いのが大きな原因とも考えられる。

手術を要する骨折

これらの骨折は、手術を要する。目的は早期(できれば手術翌日から)に、起座、起立、歩行することが期待されるためである。これらの骨折では、寝たきりになり、生命的予後が不良なこともある。これを防ぐには、手術翌日からの体動、(座位、起立など)が必要である。

早期の体動が困難である場合、

  • 沈下性肺炎
  • 尿路感染症
  • 認知症
  • 褥瘡

を発生し、生命的予後が不良になる危険性がある。

骨折による合併症

これらの骨折による生命的予後のみならず、以下のような骨折部(局所的)の後遺障害も発生する場合がある。

  • 骨癒合不全
    大腿骨頚部骨折は、人体の骨折の中で最も骨癒合が悪い骨折である。
  • 骨頭壊死
    大腿骨頭には、特殊な血管分布があり、この血管の阻血により、大腿骨頭の栄養障害(骨頭壊死)が起こることが多い。

診断

上掲の高齢、女性、骨粗鬆症、転倒、股関節痛加え、

  • 股関節可動域低下
  • 下肢の変形、短縮、可動による疼痛

などによって診断は可能である。

画像診断

大腿骨頚部骨折

レントゲン

両股関節正面像で右左を比較する。撮影には、臥位で膝蓋骨が真上に向く(すなわち、股関節大腿骨頚部の全容がわかるように)撮影するのがコツである。万一、下肢外旋位(痛い時には患肢は外を向いている)で撮影すると、骨折部の大腿骨頚部と転子部が重なって撮影され、骨折が見逃されることもある。

CT

大腿骨頚部骨折では、骨折部の転位(ズレ)の程度がよりよくわかり(Garden分類1,2,3,4)、治療方針の決定に役立つ。

MRI

レントゲンにて骨折線が疑われるがはっきりしない場合には、MRI撮像は有用である。

治療法

保存的治療

この骨折の特徴として、保存的治療を選ぶことは稀である。

手術的治療 -骨接合術と人工骨頭置換術-

大腿骨頚部骨折も、大腿骨転子部骨折も骨折部で骨折が癒合するのが最良の方法であり、1930年代からこの骨折の骨接合のためのインプラントがいろいろと開発されてきた。今では、治療具の金属材料の発展、手術方法(最新の整復位の獲得法、内固定法)などによって骨癒合はかなり成功している。

大腿骨頚部骨折では、牽引手術台、X線透視などの応用により、3本ネジ固定法が確立され、骨癒合は70%以上になった。それでも、骨癒合後にも大腿骨頭壊死は発生している。この大腿骨頭壊死は、頚部骨折の骨片の転位(ズレ)の大きいものに発生するとの統計もあり、初めから骨癒合をあきらめて骨折部の骨頭を摘出し、これに代わる人工骨頭、全人工関節手術をすることもある。人工骨頭では、骨癒合を目指すわけではないので、直ちに股関節可動、立位、できれば、歩行も可能である。これによって、肺炎などの全身的合併症を防ぐことができる。

大腿骨転子部骨折は、骨の構造上人工関節は適応なく骨接合術が必要である。この骨折の場合、骨折部の粉砕傾向があり、骨折の内固定には困難なことがあるが、近年γ-nail(ガンマー・ネイル)が開発されて、手術的予後も一躍改善している。

手術を行う上での注意点

これらの骨折は、女性の高齢者に多い(女性の方が男性より寿命が永く、女性の方の人数が多いためとの説あり)ので、全身的合併症(高血圧、心疾患、肝・腎障害、癌の術後など)をもっており、術前の検査、術後(周術期)の管理、術後のリハビリが重要である。

大腿骨頭壊死症(ANF)

大腿骨頭の血流が何らかの原因で低下あるいは停止(阻血)し、大腿骨頭が壊死になり、その部分が圧潰し、骨頭が変形し、股関節痛、股関節可動域低下、跛行の症状が出る。この大腿骨頭阻血の原因から、この疾患は2大別される。

  1. 突発性大腿骨頭壊死症(突発性=原因不明)
    (ステロイドホルモンの副作用、アルコールの多飲)
  2. 症候性大腿骨頭壊死症
    (外傷性、放射線治療照射後など)

症状

男性で40歳代、女性30歳代に多い。

  • 突然の股関節痛、可動域低下。
  • 男性は、アルコールの多飲(日本酒2合、20歳前後から30年)
  • 女性は、ステロイド性(リウマチ性疾患、喘息など)

を診察にて聴取する。

画像診断

大腿骨頭壊死症

レントゲン

大腿骨頭に特徴的な所見 - 帯状硬化像、軟骨下骨折線

MRI

大腿骨頭内帯状信号域(band pattern)

治療

比較的な安静、歩行時杖の使用。
アルコールの禁酒、ステロイドホルモンの投与の検討。

手術的治療

  • 骨切り術(杉岡式)
  • 人工関節:人工骨頭、全人工股関節置換術