2023年
治療実績
34件
腰椎の疾患で最も多く見られるのが腰椎椎間板ヘルニアで、背中側から皮膚を切開して、更に骨の一部を切除し椎間板から飛び出しているヘルニア部分(髄核や繊維輪)を取り出しますが、これを最小の切開で、顕微鏡下に行うのがMicro LOVE法といわれる手術法で、手術時間も30分程度で終了します。
腰椎椎間板ヘルニアは腰部脊柱管狭窄症とともに腰痛や下肢痛をきたす代表的な疾患です。 腰椎椎間板ヘルニアの発生は男性に多く、20歳~40歳代に多いとされていましたが、最近では10歳代や70歳以上の人にもみられるようになりました。人間が早く成長し、年をとっても青壮年のように活動的な人が増えたためだと思います。 ヘルニアの発生は椎体と椎体の間にある椎間板の変性を基盤として椎間板に捻転負荷が加わって椎間板の線維輪という部分に亀裂が生じ、椎間板の中心部にある髄核が後方へ移動して下肢の運動や感覚を支配している神経根や馬尾という神経の束を圧迫するようになる状態です(図1)。
椎間板ヘルニアの症状は腰痛や下肢痛に加えて、腰椎の前屈や後屈の制限、前屈あるいは後屈等下肢への放散痛の増強、下肢のしびれ、下肢筋力の低下などがみられます。 腰椎椎間板ヘルニアは問診や神経学的検査でおおよそ診断がつきますが、確定診断のためにはX線検査、MRI、CT、脊髄造影などが有用です。 腰椎椎間板ヘルニアの治療は高度の下肢麻痺や排尿、排便障害などの膀胱直腸障害をきたしていないかぎり、まず保存的治療を行なうのが原則です。保存的治療としては安静臥床、薬物療法、理学療法としての温熱牽引、体操療法、装具療法などが行なわれます。腰痛や下肢痛が強い場合は硬膜外ブロックや神経根ブロックを行ないます。 手術療法が行なわれるのは膀胱直腸障害や高度の下肢麻痺を呈する例、保存的治療によっても症状が軽減しない例、あるいは症状が反復し日常生活や仕事がかなり制限される例です。手術方法としては前方法と後方法がありますが、多くは後方から椎間板ヘルニアを摘出する手術が行なわれます。 私たちは時には前方からの手術も行ないますが、多くは手術侵襲の少ない顕微鏡を用いた後方からの手術を行ないます。
手術は全身麻酔でうつ伏せの状態で腰部に2.5~3cmの小さな皮膚切開を加えます。脊椎の後方部分の一部を露出し、椎弓の患部を切除し、顕微鏡下に明るい視野のもと硬膜管や神経根を小さな金属ヘラで愛護的によけて小さなパンチでヘルニアを摘出し、硬膜管や神経根の圧迫を取り除く方法です(図2)。 手術時間は約30分程度で出血もごく少量です。